准応急隊員にかんする記事を読んで
※今日の記事は少し硬めです。
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日経新聞に以下のような記事が掲載されたとのこと。
(FB上でお友達の伊藤哲也さんがシェアしてくださっていたので気が付いた。ありがとうございます。)
以下は記事からの引用。
総務省消防庁は6日までに、過疎地域や離島を対象に、出動する救急車1台に救急隊員3人以上の乗務を義務付けている現行基準を来年4月から緩和し、3人のうち1人は「准救急隊員」に任命した自治体職員や消防団員らを充てることも可能にすると発表した。人口減少や自治体の財政難で救急隊員の確保が難しい市町村が出ており、救急態勢を維持する狙いがある。
緩和対象は、過疎法で指定された797市町村と離島振興法指定の112市町村、小笠原諸島、奄美群島、沖縄の離島(過疎地域と離島の重複あり)。意見募集を経て、救急隊の編成基準を定めた消防法施行令を改正する。
創設する准救急隊員になるには、都道府県の消防学校などで止血ややけどの対処方法といった救急業務の基礎的な講習を92時間受講することが条件。傷病者の搬送や応急処置の補佐などを担うことが想定される。のどに詰まった異物の除去など高度な処置を単独で行うことはできない。
新基準を適用する市町村は、准救急隊員を乗せて救急車を出動させる地区や時間帯を明記した計画を作成し、公表しなければならない。
救急隊員の不足により消防の支所や出張所で24時間の救急態勢を維持できず、夜間は遠く離れた本署から出動せざるを得ない自治体が出ており、基準の緩和を求める声が上がっていた。
くわしく調べていないので、判断しがたい部分もありますが、という留保を付けながら、書きます。3.11や台風10号の被害を受けて、地方における救急体制のひっ迫した現状が可視化されたように思います(限界集落論や地方消滅論の流れも受けて?)。それをふまえて、このような方針が打ち出されたのだろうが、あまり賛成できない。
この方針について、現時点でわかっているのはつぎの2点で、①高度な処置は単独ではおこなえないというという点と、②傷病者の搬送や応急処置の補佐が想定される活動であること。
准救急隊員の活動にかんする条件として、①が付されることは容易に想像がつく。応急業務の基礎講習を受けることは必須条件だとしても、92時間の講習の受講で専門的知識・技能を習得したと認められるかは疑問である。そして、一般的な感覚として、「本職」でない人に自らの命を預けることに不安は残るだろう。
だからといって、「②のような補助的な業務にあたってもらいますよ」という説明に納得できるわけでもない。そもそも、具体的な活動が見えてこない。①の条件に比べると、たしかに専門的な知識・技能の必要性は低くなるかもしれない。しかし、応急処置の補佐という業務がどこまで専門性を持ったものになるのか。専門的知識・技能を有したDMATと救急隊でさえ活動範囲の線引きが難しいように、救急隊員と准救急隊員のあいだの線引きも大きな問題になるような気がする。
じっさいにこれから示される業務計画に、どのような内容が記載されるかは予想がつかない。しかし、一番懸念すべきなのは、業務計画とじっさいの応急業務が一致するか否かという点。つまり、現場において計画以上の業務がおこなわれる可能性がまったくないのか。もっというと、准応急隊員が傷病者の生死を左右することがあり得るのか。極端かもしれないが、そのあたりがはっきりしないまま、ボランティア*1の消防団員がおこなうには、責任とリスクが大きすぎるように思います。
それに、じっさいの業務をおこなう場合、職員と同様に24時間待機(勤務)とするのか、准応急隊員としての任命(出動命令)は誰がおこなうのか*2、本業との兼ね合いはどうするのか、、、、などなど検討課題は山積しているのではないだろうか。地域における救急態勢の維持は欠かすことができないが、それを消防団員が担うにはより慎重な議論が必要だと思う。
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投稿して10分も経ってませんがさっそくの追記。
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というか、現状で、応急業務にあたることのできる消防団員なんているのだろうか?