ブックレビューに入る前のきわめて断片的な考察
この年末年始は、12月9日のブログで紹介した、『現代思想』2017年11月号を課題図書として読むことにしておりました。
結果から言って、結局読み終わらないまま今にいたります、、、。
とはいえ、特集の「エスノグラフィーー質的調査の現在」は非常に面白く、かつ勉強になる論考ばかりでした。この特集の編集を担当したのが、立命館大学大学院の岸政彦先生(以下、岸さん)。岸さんは、社会学者のなかで、いま一番勢いがあるといっても過言ではないと思います。
読書好きの方には、第156回芥川龍之介賞候補、第30回三島由紀夫賞候補になった「ビニール傘」の著者といった方が分かるかもしれないですね。
岸さんの作品でこれまでに読んだものがこちら↓
『同化と他者化ーー戦後沖縄の本土就職者たち』ナカニシヤ出版 2013年
『街の人生』勁草書房 2014年
「鉤括弧を外すことーーポスト構築主義社会学の方法論のために」『現代思想』青土社 2015年7月号
『atプラス』太田出版 2016年 28号
『愛と欲望の雑談』 雨宮まみとの共著 ミシマ社 2016年
『質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学』石岡丈晃・丸山美里との共著
有斐閣 2016年
質的社会調査の方法 -- 他者の合理性の理解社会学 (有斐閣ストゥディア)
- 作者: 岸政彦,石岡丈昇,丸山里美
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2016/12/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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(最近買ってこれから読むもの)
書き出してみると、結構な本数を読んでいました。自分のことながら知らなかった(笑)
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年末年始の課題図書『現代思想』ですが、そのなかの「それぞれの『小石』」「プリンとクワガターー質的調査の断片的なディテールについて」、そして最近買った『質的調査の方法――他者の合理性の理解社会学』に共通しているキーワードが、「他者の合理性の理解」。
岸さんは、ポール・ウィリスの『ハマータウンの野郎ども』のラッズや上間陽子さんの『裸足で逃げる』のDV被害に遭った女の子を例に取りながら、一見すると不合理な行為(選択や言動)であっても彼らの固有の文脈や状況・背景に置きなおしてみると、かれらなりの「合理的な判断」の結果であるとしています。それらの行為は、長期的には不利で完全に合理的ではないが、彼らなりの理由や動機・利益、つまりその行為の背後には仕方なさがある。その「仕方なさ」「しょうがなさ」をとらえるキーワードが、「他者の合理性の理解」であるとしています。
- 作者: ポール・E.ウィリス,Paul E. Willis,熊沢誠,山田潤
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1996/09/01
- メディア: 文庫
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岸さんのあげている事例を「他者の合理性」として解釈することは分かるのですが、必ずしも「合理性」という語をもちいる(そして、解釈する)ことが適しているのか?
「仕方なさ」も「合理性」として解釈することは可能でも、より広範囲に対応しうる「他者の〇〇の理解」、〇〇があるのではないか?と考えております。
とおもって、いろいろ探してみたら、ほかにもそう思っている人もいるみたいでした。
http://d.hatena.ne.jp/k-i-t/touch/20171107#p1
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理解社会学ついてなんやかんや言うんだし、ちゃんと読み直さないとなーと思い、マックス・ウェーバーの『理解社会学のカテゴリー』をあらためて買いました。詳しいブックレビューは、『理解社会学のカテゴリー』『他者の合理性の理解社会学』をちゃんと読んでからあらためて書きたいと思います。